【漫画】シュトヘル最終巻祭り【14巻】
伊藤悠先生ありがとうございまああああす~~~~!!
シュトヘル最終巻を読んだ今、伊藤悠先生のいらっしゃる方角へ泣きながら五体投地して叫びたい気持ちです。
というわけでシュトヘル最終巻の14巻を読んだ感想を勢いに任せて書きなぐります。
ネタバレしかない、というくらいネタバレ祭りです。
・出会いと望みが人を作る
全巻名言の宝庫だったシュトヘルでしたが、最終巻も来ましたね、この名言。
おれを作ったのは出会いと望みだった。
付けられた名が刻まれた傷がどう記されようが記されまいが、いい。
このユルールの言葉は人とはどういうものか、というのを端的に表していると思います。
ユルール(祝福、の意味)は大ハンによって背中に奴隷という字を刻まれ、トルイ皇子の亡き後、トルイとして生きます。
それは人によっては奴隷という字に囚われる(父親の大ハンのように)、トルイではないのにトルイとして生きることに苦しむ、とても苦しい生き方になりかねません。
でも、ユルールはトルイが
おまえが仕えているのは国でも部族でも、王でもなく、おまえ自身ですらない。
おまえが仕え、殉じるのはおまえの〝望み″
と言ったように、西夏の文字を残すという自分の目的によってのみ動く限り、奴隷でもなくトルイでもなく、自分自身にすらこだわる必要が無い。
人は何のために生きているのか?何によって生かされているのか?
人は心によって生きている、人は人の中で生きている。
人の心と心をつなぐ手段が文字だ。
それを象徴するのがユルールとシュトヘル(そして須藤)の出会いだと思うんです。
最後のシーンはもう、感動という一言ではあらわせない。
最後のシーンの「文字」はここでは書きません。書いてしまったら、うまく伝わらなくなってしまいそうだから。
帯にあったように文字か、おまえか。
という究極の選択を迫られた時、須藤とシュトヘルのとった行動の意味はとても重い。
文字はただの模様ともいえる。それを使う人がいてこその文字。
ただね、残されたユルールは辛かったよね。シュトヘルが自分を守って死んだ(と思った)時のユルールの叫びは、つら~。
というか私は13巻でシュトヘル死んだ(ユルールが殺した)と思ってました。
シュトヘルはユルールのためなら命など惜しくないと思ったし、ユルールも文字を残すために覚悟完了、だと思ったから。
結局シュトヘル生きてましたね。
巻末にあったように死ぬ死ぬ詐欺を何回やったんだ、というくらいの不死身っぷり、まさに悪霊(笑)
でも私はシュトヘル生きてて良かった派です、やっぱり最後は希望を持って終わりたいじゃん?
ユルールと再び会った時のシュトヘルの顔を描かない演出、二人がその後どう過ごしたかを描かないのはとても良かった。
なんかもう、描くだけ野暮ってもんじゃん?
どうか幸せになってくれ。
てゆうかユルールがイケメンに成長しすぎてびびりましたわ。作中一番のイケメン、といっていいんじゃないかと。
10歳から素質はあったけどね、シュトヘル良かったね?
・ハラバルお兄ちゃん幸せになってくれ
で、ユルールはいいとしてハラバルですよ。
ハラバルは幸せになったんか、そこのとこどうなんだよ、ドンドン
いやー、戦争してるし人は死にまくるし、悲惨な目にあう人しかいない、という時代の話だからしょうがないとはいえ、ハラバルの境遇ってその中でもヒドイ方だと思うんですよね。
少年時代にツォグ族がモンゴルに敗れ滅びかけ、父親である族長が頭を下げ媚る見たくもない姿を見、その武をもってツォグ族を再興しようとする過程で母の国西夏を滅ぼし。
ハラバルは血のつながらないユルールのこと深く愛していたよね。8巻のユルールのため?ウサギを持ちかえった時のハラバルの顔印象的だな。なんだろう、ちょっとさびしい感じがした。
そのユルールの行動によってツォグ族を一人残らず殺されるということになるし。
普通だったら発狂、自殺してもおかしくないし、実際悪霊化しつつあったけど、なんとか踏みとどまったように見えました。
でも最後に大ハン(チンギス・ハン)を殺した時のハラバルの血の涙の顔、あれはどういう気持ちなんだろうなー。やっと復讐を果たした満足とか到底思えませんが。
対照的に大ハンはすがすがしい顔してるし。
シュトヘルとユルールは出会えたとけど、ハラバルにはそういう出会いがあったようにも見えないし。
大ハンを殺したあとどうやって生きていったのだろう。
どうか男でも女でも、一緒に生きていく誰かとの出会いがあって欲しい。
三つ目(馬)はずっと一緒にいてくれたようだけどね。
私も長子だし、ハラバルお兄ちゃんにはどうしても肩入れしてしまうのだ。
ハラバルってこの漫画で最強クラス(シュトヘルも一度負けてるよね?)に強いうえ、性格も高潔というか、超かっこいいじゃないですか。
本当幸せになってくれ!としか言えない。
シュトヘルは最近集めていた漫画で一番好きな漫画だったので終わってしまうのが寂しいです。
やっぱ漫画っていいもんですね。
ゴールデンカムイの10巻の最後のシーンを見た時も思ったんだけど
「この世界にこんな美しいものを産み出してくれて、この世界を美しくしてくれてありがとう、ありがとう」
みたいな気持ちになる時ある。そういう作品に出会えるのって幸せ。
人は花も虫も何も創り出せない(遺伝子改良とかはできるかもだけど、ゼロから生命を創ることはできない)けど、創作って花を咲かせるように美しいものをこの世界に産み出す行為なのかも。
なんか、人間って素晴らしいな、と思えてくる。
最近人間の醜い面を押し出した作品も多いけど、私は人間の素晴らしい姿を描こうとする人の作品が好きだな。
というわけで、シュトヘルとシュトヘルを産み出してくれた伊藤悠さんありがとうございます。